キャットフードの添加物(合成調味料)
合成調味料(化学調味料・うま味調味料)は、猫の嗜好性を刺激し食いつきをよくするために使用されます。
人工の調味料と聞くと猫の身体への影響が心配ですね。
しかし、合成調味料は製造、使用について企業秘密として扱われ、情報が得られないため安全性の確認が難しいと言われています。
合成調味料は危険でしょうか。
キャットフードに使用される主な合成調味料
1.グルタミン酸ナトリウム(アミノ酸)
うまみ成分として知られており人間の様々な食品にも使用されている、うま味調味料の代表です。
アミノ酸にはたんぱく質を構成するグルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸など20種類の成分が含まれています。
このうまみ成分は日本人が発見したもので日本では必要不可欠のものですが、1968年にうま味調味料を使用した中華料理を食べたアメリカ人が体の炎症やかゆみ、しびれ、眠気などを引き起こしたために危険視されました。
しかしその後の調査で危険だという証拠は出ておらず、過剰に摂取しない限り体に影響は出ないと動物実験により証明されています。
今でもアメリカではうま味調味料への偏見が多少残っているようですが、グルタミン酸は肝臓や腸管などで代謝されるため、体に蓄積されることはありません。
また、グルタミン酸ナトリウムは、日本はもちろん国連食糧農業機構(FAO)や世界保健機関(WHO)など世界的にも安全性が認められています。
キャットフードに使用しているのもうまみによって食いつきを良くするためです。
それでもグルタミン酸ナトリウムの安全性については意見が分かれているのが現状です。
人も猫も体質に違いがあり、ある人には問題が無くてもある人には影響が出るということもあり得ます。
キャットフードにグルタミン酸やアミノ酸の表記がされていても問題はありませんが、過剰摂取は避け、猫の身体に合わないと感じたらキャットフードを変えるとよいでしょう。
2.グリシリジン・アンモニエート
グリシリジンは漢方薬として知られるマメ科植物の甘草(カンゾウ)の根に含まれる甘味成分で、ペットフードに用いられてることがあります。
人間の食品には使用されていないと言われていますが、グリチルリチン酸アンモニウムという名称で人間の食品や医薬品、化粧品などに使用されています。
甘味は砂糖の30倍以上もありますが、甘草独特の風味により人にはあまり甘味料としては好まれません。
しかし、抗炎症作用や抗潰瘍作用、抗アレルギー作用などに優れているため、人間の食品に用いるより医薬品に用いられる方が多いのです。
このようにグリシリジンは安全性が高く薬理作用がある優秀な成分ですが、過剰摂取により、偽アルドステロン症(血圧を上昇させるアルドステロンというホルモンの増加が見られないのに高血圧になり、むくみや高ナトリウム血症や、低カリウム血症などがあらわれること)を発症したり、ステロイド剤と似たようなリバウンド(長期連用していた薬の使用をやめると炎症などの症状がかえって悪化すること)などの副作用が起こる可能性が示唆されているため、一日の摂取量が決められています。
動物への影響ついては、食品安全委員会での報告によると摂取量が基準通りならば健康被害が起こることはありません。
ペットフードに使用する場合も基準に沿って配合されていますから、普段与えているキャットフードに含まれていても過度に心配する必要はありません。
3.ビートパルプ
ビートバルプとは、サトウキビと並ぶ砂糖の主原料であるサトウダイコン(テンサイ)から砂糖を抽出した後に残る繊維質を指します。
ビートパルプシュガーという甘味料としても利用されます。
砂糖の抽出方法には大きく分けて2種類あり、1つ目はサトウダイコンに圧力をかけながら絞って徐々に抽出する方法、2つ目は硫酸系の薬剤を使って砂糖以外の成分を溶かす方法になります。
薬剤を使用した抽出方法の場合、時間やコスト削減になりますが薬剤が残ってしまう危険と、善玉菌の栄養となるオリゴ糖が除去されてしまう可能性が指摘されています。
また、肉食である猫は繊維質の消化が得意ではないため、キャットフードに繊維質が多く含まれていると便秘の原因になります。
このような理由から、繊維質であるビートバルプは危険な添加物という認識がされていますが、事実とは異なるようです。
ビートバルプはペットフードに使用されるほか、家畜の餌としても利用されており、家畜飼料法により抽出方法が定められているため薬剤を使用して抽出することはほとんどありません。
家畜飼料法はペットフードに当てはまるものではありませんが、ビートパルプの残薬によるペットへの健康被害は報告されていないため、ペットフードに使用するビートパルプも薬品での抽出方法を採用したものではないでしょう。
しかし、消費者は製造方法を知ることができないため、真偽を知ることは難しいのが現状です。
心配であればあまりに安価なペットフードを選ばないようにすると良いでしょう。
実のところビートパルプがペットフードに使用されているのは、ビートパルプが大腸内でバクテリアによって発酵し善玉菌を増やすことで腸内環境を整え形の良い便の排出を促したり、毛玉を体外に排出することを助ける働きがある非常に有用な繊維質だからです。
さらに、可消化エネルギーも豊富に含まれているためエネルギー源にもなります。
しかしながら、猫によって体質に違いがあるため、繊維質により便秘気味になる子もいます。
また、ビートパルプが多く含まれている場合、その分たんぱく質や脂質が不足する可能性がありますから、飼い猫の体調に合わせて与える方を工夫するとよいでしょう。
4.コーンシロップ
コーンシロップはトウモロコシのでんぷん(コーンスターチ)を酸、微生物酵素、麦芽酵素で分解し糖に変えた甘味料です。
人間の食品に多く使用されています。
コーンシロップにはエネルギーとなるブドウ糖が含まれますが、それ以上に果糖が多く含まれています。
果糖は摂取しても空腹感が続き満腹感も得られないので、食欲が増して食べ過ぎたりする傾向があります。
また、過剰摂取すると中性脂肪が増え肥満の原因になるとも指摘されています。
実際日本では人が一日に摂取する糖類を5%未満に制限しようという動きがあり、米国では果糖の摂取を控えるよう呼びかけています。
しかし、必ずしも果糖が悪いものであるとは言えません。
果糖には体内ですぐにエネルギーに変換される性質があり、肝機能に重要なグリコーゲンを育成する働きもあります。
また、インスリンの上昇が少ないため、低血糖の糖尿病患者のために使用されています。
このような作用があるためコーンシロップはキャットフードに食欲増進の甘味料として使用されるほか、糖尿病で重度の低血糖が見られる場合、応急処置として使用することがすすめられています。
ですから、キャットフードに含まれていても過度に心配する必要はありません。
普段からエサの与えすぎに気を付けるなら肥満にはならないでしょう。
猫が脂肪を消費できるよう適度に運動を行い、肥満気味の子にはコーンシロップは含まないキャットフードを選ぶなど対策をとることもできます。
合成調味料は危険な添加物というイメージがあるかもしれませんが、ペットフードに使用されているものの多くは安全性が認められています。
しかし、過剰摂取は健康に影響が出る可能性があることも忘れてはなりません。
猫の体調に合わせてエサの与え方を工夫し、バランスよく摂取するなら、安全で有用なものとなります。
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