泌尿器症候群用キャットフード
泌尿器系の疾患は猫がかかる病気の約10%を占めています。
特にオス猫はメス猫より尿道が長く狭い構造であるため、発症のリスクが高いといわれています。
あなたの愛猫も一生に一度は泌尿器症候群になる可能性があります。
ですから、泌尿器症候群について知り、愛猫を守る対策をしましょう。
泌尿器症候群とは
「猫泌尿器症候群(FUS)」とは頻繁にトイレに行く、尿の排泄がうまくいかない、血尿などの症状を総称したもので、そのうち「猫下部尿路疾患(FLUTD)」が多いと言われています。
膀胱炎や尿路結石といった病気はよく耳にしますね。
結石とはマグネシウムやカルシウムが固まってできた結晶のようなものをいいます。
尿管に直接結石が発生することはまれで、尿管につながる腎盂に発生する腎盂結石や膀胱に発生する結石が流れて下部尿路に留まってしまうことがほとんどです。
(1)ストルバイト尿結石
猫の尿は通常(空腹時)は酸性ですが食後はアルカリ性に変化します。
一時的なアルカリ化は自然なことですが、マグネシウムやリンなどのミネラルの過剰摂取や細菌感染によって尿がアルカリ性に変化してしまうと、リン酸アンモニウム・マグネシウム(ストルバイト)が結晶化してしまいます。
これをストルバイト結石といいます。
ストルバイトは尿が酸性になることにより溶けるので、通常であれば尿と共に体外へ排出することができるのですが、ミネラルには溶けません。
ですから尿がアルカリ性に変化しているとストルバイト結石が解けずに尿管に溜まっていってしまうのです。
猫の尿路結石で最も多いのはこのタイプです。
(2)シュウ酸カルシウム尿結石
マグネシウムの過剰摂取はストルバイト結石を引き起こすからといって、マグネシウムの摂取を控えてマグネシウム不足を引き起こしてはなりません。
マグネシウムが不足し、尿が極端に酸性に傾くとシュウ酸カルシウム結石を引き起こす恐れがあります。
また、カルシウム不足もシュウ酸カルシウム尿結石の原因のひとつです。
カルシウムが不足すると、本来カルシウムと結合して便として排出されるはずのシュウ酸が余ってしまい、尿中に含まれるシュウ酸の濃度が高くなり結晶化を起こすのです。
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泌尿器症候群の初期症状(膀胱炎)
・結石が詰まって尿管をふさいでいるため、排尿がうまくいかず頻繁にトイレに行きます。
・排尿の姿勢をとってもなかなか尿が出せないまたは少量しか出ないことが何回もあります。
・性器が気になるのかしきりになめることが多くなります。
・排出する尿に血が混じります。
・詰まった結石が痛みを引き起こして辛そうに鳴きます。
泌尿器症候群の末期症状
末期になると尿毒症や急性腎不全を発症します。
意識が朦朧とし、最悪死に至ることもある危険な状態です。
泌尿器症候群の末期症状
排尿がうまくできないので血中に老廃物がたまってしまい、尿毒症を引き起こします。
尿毒症は食欲不振や元気喪失、貧血や心機能や腎機能の低下などの症状が見られます。
同時に代謝異常や免疫不全に陥り、感染症にかかりやすくなります。
また、アンモニアが排出されず脳にまで回ってしまうと痙攣や昏睡状態になり高確率で死に至ります。
急性腎不全(腎後性腎不全)
尿路結石や腎結石による尿道や尿管の閉塞、尿路の損傷などが原因で排尿が困難になると腎機能が急に悪化することを指します。
症状として尿の量が明らかに減る乏尿、あるいは尿が全く出なくなる無尿が見られます。
ほかにも元気がなくなり食欲も落ち、嘔吐・下痢も頻繁にするようになり、ひどくなると脱水症状や、口臭がきつくアンモニア臭がするようになったり、けいれん、体温低下、昏睡、意識障害、尿毒症の症状が現れ、最悪死に至ることもあります。
急性腎不全は進行して命の危険にさらされることも、慢性腎不全にかかる危険もありますが、点滴や透析などの治療によって回復が望めます。
しかし状態がよくならない場合ももちろんありますから、普段から猫の健康に注意を払うことや、定期的に健康診断をすることを心がける必要があります。
泌尿器症候群の原因
1.水分不足
猫は元々積極的に水分を摂らない動物ですから、のどが渇いてもあまり水を飲まない傾向があります。
しかしそれでは脱水症状を起こしかねません。
それを防ぐために、体外に排出される水分を最小限に抑えようと少量で老廃物の濃度が高い尿を排泄する身体のしくみになっています。
濃度の高い尿は尿路結石の原因になります。
ですから、普段から食事と共に水を飲ませてあげましょう。
2.偏った食事
猫の尿は酸性ですがマグネシウムの過剰摂取によりアルカリ化します。
逆に、マグネシウムやカルシウム不足になると尿は酸性に傾きます。
このように尿が極端に酸性かアルカリ性に傾くと尿路結石を引き起こす原因になります。
栄養が偏ることが無いようバランスよい食事を食べさせてあげましょう。
体調に合わせてマグネシウムやカルシウムの含有量の少ないキャットフードを与えることも大切です。
3.細菌感染
下部尿路疾患の主な原因は細菌感染です。
尿道から細菌が侵入すると膀胱が炎症を引き起こし膀胱炎になります。
また細菌が腎臓にまで達すると腎盂腎炎を引き起こします。
膀胱炎や腎盂腎炎は抗生物質での治療が必要になります。
4.生活環境・猫の種類
他にも生活環境や猫の種類によって下部尿路疾患のリスクが異なります。
例えば、トイレがきちんと清掃されていないと猫はそこで排泄することを嫌がり、我慢してしまいます。
また、ペルシャ猫は遺伝的に下部尿路疾患にかかりやすいことが分かっています。
猫がトイレを我慢しがちかもしれないと思ったら、生活環境を見直し、猫が過ごしやすい環境にしてあげることが大切です。
また、猫の種類によってかかりやすい病気がありますから、飼い猫の種類と病気について理解を深め、発症のリスクを下げられるよう食事や運動に気を遣いましょう。
5. 特発性膀胱炎
細菌感染などはっきりした原因が無いのに尿路疾患にかかることもあります。
原因不明のものを特発性膀胱炎や間質性膀胱炎といいます。
これらの膀胱炎については調査が行われており、ストレスが関与しているのではないかと推測されています。
キャットフード
泌尿器症候群の多くは尿路結石です。
マグネシウムやカルシウムによって尿が酸性やアルカリ性に偏ってしまっている状態ですから、pHバランスを整えるためにpHコントロール用キャットフードを与えましょう。
とはいえ先ほどご説明したとおり主な結石は二種類あります。
結石の種類によって与えるキャットフードは異なります。
pH値とは
酸性・アルカリ性を0から14の数値で示す単位のことです。
pHの後に数字が続きます。
この数字が7の時は中性を示し、0に近づくにつれ酸性度が高く、14に近づくほどアルカリ性度が高くなります。
この値をコントロールすることを「pHコントロール」と言います。
猫の理想のpH値は6.5~6.8です。
ストルバイト結石の場合
アルカリ性の尿を酸性に近づける効果があるpHコントロール用のフードを与えましょう。
ストルバイト結石が出来ている場合、尿はマグネシウムの過剰摂取によりアルカリ化しています。
ですから、マグネシウムの含有量が少ないもの(0.09%以下)が良いでしょう。
シュウ酸カルシウム結石の場合
極端に酸性に傾いた尿を中性に近い値(pH6.5~6.8)に近づけ維持できるようpHコントロール用のフードを与えます。
ストルバイト結石では控えるべきマグネシウムですが、シュウ酸カルシウム結石の形成を防ぐ働きがありますから、シュウ酸カルシウム結石の場合はマグネシウムを含むキャットフードが良いでしょう。
pHコントロールによって尿の値が正常になれば既にできてしまった結石を溶かしたり、新たな結石の形成を防ぐことができます。
pHコントロールのキャットフードを与える際は水分の補給も必要です。
ウェットタイプのフードで水分を摂取したり、食事のあとに水を飲ませてあげるようにしましょう。
猫はグルメなので療養食をなかなか食べてくれないことがあります。
今までのフードに少しずつpHコントロールのフードを混ぜて慣れさせたり、飼い猫が好むおやつを少しトッピングしたり食いつきを良くする工夫をしてみましょう。
pHコントロールのフードをどうしても食べてくれないときは獣医師と相談の上マグネシウムやリンの含有量が少ないキャットフードを選ぶとよいでしょう。
日頃から予防しよう
膀胱炎は抗生物質の投与での治療が可能ですが、尿路結石は外科手術での結石の除去が必要になることがあります。
また、尿毒症や腎不全は危険な状態で回復も難しい病気です。
愛猫をそのような病気で苦しめたくはありませんね。
猫の体質によって発症リスクが異なるとはいえ、普段から泌尿器症候群の予防をしておけば発症のリスクを下げることができます。
・新鮮な水をいつも飲みやすい場所に用意し、猫が十分水分補給できる環境を整える
・毎日の飲み水や尿の量を観察する
・キャットフードの一日の目安や栄養バランスを考慮し、マグネシウムやカルシウムなど過不足なく摂取できるようフードを調節する
・トイレを清潔にし、猫が排泄しやすい環境を維持する
・肥満は泌尿器症候群のリスクを高め、再発もしやすいので適度な運動をさせる
泌尿器症候群は一度かかると再発のリスクが高くなります。
泌尿器症候群にかかった子もかかってない子も普段から食事や飲み水の管理を怠らないようにしましょう。
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